「こんばんわ~ありがとうございます」いつもの様にお座敷へ入りますと時代劇のスター俳優Мさんがおられました。
私は初めてお目にかかりましたので名刺を差し出して「よろしくお願いします。」とご挨拶しましたら
デビューはいつだったの?とかお姉さんは誰?とか色々質問され、その後撮影の楽しいお話を聞かせて頂いて
その晩は終わったんです。
次の日お母さんが「あなた今日、太秦(うずまさ)の撮影所へ行って」と言われました。
なんでも昨日お座敷で会ったMさんが女優が1人急病になったのでエキストラに来て欲しいと言われたとかで
びっくりした私は「なぜ私なんですか?」と聞いたところ「芸者さんの役なんですって。あまり顔が知られていない
舞妓と云うのがわからない人が良いって言っておられるの」との事でしたけれど喜んで良いものやら、悲しんで良いものやら…
撮影所の中は薄暗くて、なんだか叩いたら埃が出そうな衣裳を着せられてMさん演ずる水戸の殿様と宴会をしている
芸者さんの役でした。
台詞もありましたよ 江戸の芸者さんなのに関西訛りが出るとか言われて何回もやり直しでおまけに
歩き方に色気が無いとか粋じゃ無いとか監督さんとMさんが言っておられるのです。
本当に散々でしたわ。
無事に撮影が終わり家に帰った時はお化粧をする元気も無いくらい疲れましたけれど、その日はMさんが
1日お休みさせて下さったのでお座敷には出ませんでした。
放送日は家のお母さんや姉さん、料亭の人達みんなで観ましたけれど
みんな「いや~太って見えるものね」 「台詞が学芸会並だ」とか好きな事を言って、舞妓仲間などは笑い過ぎて
涙流している妓もいたんですよ。 もう懲り懲りでした。
では また ありがとうございます