家にお風呂はあるのですが修行中の時は外の銭湯に行くのが
決まりでした
舞妓になってからは家のお風呂に入っても良いのですが
仲間の舞妓さん達はお風呂屋さんへ行く人も多かったので
みんなで行く方が楽しかったのでお座敷が終わった後の
日課でした
舞妓の髪を結ったまま入るのですし他から見たら奇妙な光景
でしょうが、なにしろ花街の中にあるお風呂屋さんの事ですし
私達も他のお客さんも普通のいつも通りの事です
お風呂の中では「こんばんわ、お姉さんお疲れ様です」
「先ほどはありがとうございます、お姉さん」とお座敷と
同じ様な会話が交わされて「お姉さんお背中流させて下さい」
「いいのよ、あなた自分の事をしなさい」
「はい、ありがとうございますお姉さん」とあちこちで
同じ声がします
修行中からお風呂屋さんへ行って先輩やお茶屋さんの人と
出会ったら必ずお背中を流させて頂くのよとお母さんから
言われていました
舞妓になっても、それは変わらないのです
そのうち自分も先輩になって修行中の人や後輩の舞妓さんから
「お姉さんお背中流させて下さい」と声がかかって
「いいのよ」と言った時、すごくお姉さんになった気がしました
脱いだ着物などを入れる行李(こうり)と呼ばれる柳で編んだ
カゴがあって行きつけのお風呂屋さんには自分の名前が入った
行李がありました
そんな懐かしいお風呂屋さんも一軒、又一軒と姿を消して
寂しいかぎりです
ありがとうございます では 又