京都文化博物館では現在、「挑む浮世絵 国芳から芳年へ」という浮世絵展が4月10日まで開催されています。せっかくなので春は、京都を代表する洋建築×浮世絵の素敵な組み合わせの展覧会にお出かけに行きませんか?浮世絵の色調を参考に、日本の伝統色を活かした着物のコーディネートでお出かけなら、会場の雰囲気にもマッチし、気分が上がること間違いなしです。
赤いレンガの外壁が一際目立つ京都文化博物館は、京都の三条通沿いに数多く残る明治・大正期に建てられた洋風建造物の中でも、ランドマーク的な存在です。1906年に建設された洋館は、かつては旧日本銀行京都支店として使用されていました。正面から入ると巨大な吹き抜けやかつでの銀行時代を彷彿させる重厚な木製のカウンターなど時代を感じさせるレトロな空間が広がっています。
日本の伝統色を基調としたシックなコーディネート
浮世絵を見にいくのであれば、江戸時代のスピリットを感じるためにも、ぜひ着物を着て行きたいものです。浮世絵に使用されている日本ならではの伝統色を基調とした着物コーデで、いつもよりシックに渋めに決めてみてはいかがでしょうか。日本の文化をより立体的に体感できるはずです。
わずかに緑みがある少し鉄色がかった暗い紺色。紺色は藍染めを何度も繰り返して染めていく色。
江戸時代は最も日常的に愛され需要の高い色だったそうです。日本人好みの紺色を着こなしてみてください。
京紫は、京都で染めた紫の意で、赤みがかった紫色のこと。少し青みがかった江戸紫に対してついた名称。古くからの都である京では「雅」なものが好まれるのに対し、江戸では「活気」があるものが好まれたそうです。そういった両都市の性質が紫色の色みにも現れているとのこと。京都ならではの華やかな紫の着物を着て雅な気分を味わってみてはいかがでしょう。
茶色がかった鼠色、今でいうグレージュ。江戸中期以降、他の茶や鼠色とともに流行しました。当時、庶民が身につけられる着物は、柄や色、生地まで細かく厳しい規制があり、生地素材は「麻」「綿」、色は「茶色」「鼠色」「藍色」のみと限定されていたそうです。そのため、他者との差別化から同じ茶や鼠でも微妙な色合いを出すことに職人たちは腕を競ったそうです。
そこから、四十八茶百鼠(しじゅうはっちゃひゃくねず)という言葉も生まれました。これは、江戸幕府に贅沢を禁じられた江戸の職人たちが試行錯誤の末、色の中に微妙な色調を生みだした「茶色系」「鼠色(灰色)系」の染色のバリエーションを指す言葉で、茶色48色、鼠色100色使用(具体的な数字ではなく、多数という意味だという説もあり)したことから生まれたもの。そんな中でニュアンス豊かな茶鼠色も生まれたのでしょう。日本ならではのこだわりの繊細な色合いを感じてみてください。
「奇想の絵師」歌川国芳(1797-1861)と「最後の浮世絵師」月岡芳年(1839-92)
京都文化博物館で4月10日まで開催されている「挑む浮世絵 国芳から芳年へ」は、浮世絵の中でも後半期を代表する浮世絵師・歌川国芳と門人の月岡芳年の作品が主に展示されています。
歌川国芳は、西洋の透視図法や解剖学に影響を受けた写実的な描写が特徴的な江戸自体末期を代表する浮世絵師です。 「名所絵の広重、武者絵の国芳」と称され、迫力ある武者絵で人気に火がついた国芳ですが、作品のジャンルは役者絵、武者絵、美人画、妖怪絵、名所風景、戯画、春画など多岐にわたっています。
奇想天外な発想力、斬新なデザイン力、ダイナミックな画風、そして反骨と風刺の精神に富んだ作品群は、伝統的な浮世絵の枠にとどまらない新しい魅力を放ち、当時の人々から絶大な人気を誇りました。また、国芳の元には多くの門人が集まり、浮世絵師の最大派閥を形成しました。
中でも月岡芳年は幕末から明治へと移り変わる激動の時代を駆け抜けた天才浮世絵師で、「最後の浮世絵師」や「鬼才の浮世絵師」と称され、国芳ゆずりの自由な発想や写実的な技法で、時代の世相を写す作品を多く手掛け、近年評価が高まっています。芳年の作品の中で最も有名なのは血みどろ絵ですが、国芳と同様、扱ったジャンルは非常に幅広く、風刺画、美人画、漫画など数多くの作品が残っています。
歌川国芳の作品ギャラリー
猫とナマズで「なまづ」の文字を作った遊び心が感じられる作品
坂田怪童丸は、後に源頼光の四天王寺の一人として活躍する坂田金時の幼少時の姿で金太郎の通称。 怪童丸と巨大な鯉の組み合わせは、端午の節句飾りのモチーフで江戸時代多くの浮世絵に描かれている。
月岡芳年の作品ギャラリー
浮世絵鑑賞後に散策したい三条通沿いのレトロな映え洋館建築
京都文化博物館が建つ京都市街を東西に走る「三条通」は平安京時代の三条大路であり、鴨川にかかる「三条大橋」は東海道五十三次の終点であったことから、明治時代には京都のメインストリートとして栄えました。明治4年、京都博覧会が岡崎で開催されると、当時のメインストリートだった三条通沿いに数多くの洋風の近代建築が建設されました。しかし、その後、再開発が進み、町の中心地が道幅が狭く密集した三条から道幅の広い四条に移ったことで、当時のモダン建築が再開発を免れ数多く残されることになりました。
文化博物館の別館はまさにその三条通ぞいの洋館の中でも明治時代を代表する「辰野式」建築物の一つ。ぜひ浮世絵展鑑賞後は、洋館を見ながらそぞろ歩きや記念撮影をして探索してみてください。
京都中央郵便局
設計:逓信省営繕課 吉井茂則、三橋四郎
所在地:京都府京都市中京区三条通東洞院東入菱屋町30
当初は京都郵便電信局の庁舎として建設された。ネオルネッサンス様式のレンガ造2階建て建造物。
こぼれネタ:中央入口の階段だけ9段あるのは、建設当時、馬車で配達をしていた名残だそうです。
みずほ銀行 京都中央支店
設計:辰野金吾+葛西萬司 / 辰野葛西建築事務所
所在地:京都府京都市中京区烏丸三条南入饅頭屋591
京都文化博物館と同じく、明治時代を代表する「辰野式」のレンガ造り2階建ての建物。元々は渋沢栄一傘下の第一銀行の京都支店として建てられたもの
日本生命京都三条ビル
所在地:京都市中京区三条通柳馬場西入桝屋町75 国の登録有形文化財
青銅色のとんがり屋根が特徴的な洋館。赤レンガの上に石張りのスタイル
SACRAビル(さくらビル)
旧不動貯金銀行京都支店で国の登録有形文化財
外観はロマネスク建築風 1階は煉瓦造、2・3階は木骨煉瓦造。
1928ビル
所在地:京都府京都市中京区弁慶石町56
星印をモチーフとしたバルコニーの形状や玄関左右の照明のデザインにアール・デコの影響が認められる意匠に注目すべき価値があるとして、京都市登録有形文化財に登録されている。武田五一氏による代表的な建築設計作品のひとつ
文椿ビルヂング
約5mという社寺仏閣並みに天井の高い造りが特徴的な木造2階建ての洋館。当初は貿易会社の社屋として使われ、その後繊維問屋の手に渡り、戦後間もなくはアメリカの文化施設としても使われていた。腰折れ型のマンサード式屋根と出窓が大正ロマン風建築の特徴を表している。
旧家邊徳時計店 現・MARcourt
所在地:京都府京都市中京区中之町27
日本唯一で最古の時計貴金属商の家邊徳之助氏が築造した煉瓦石造店舗。煉瓦造洋風店舗としては日本最古でその後背部に展開する典型的な純和風の京町家と共に、平成16年国(文化庁)の登録有形文化財に指定。二方向から上がる華麗な木製の螺旋階段も装飾品のように素敵です。
創業93年の甘味処「甘党茶屋 梅園」三条寺町店
浮世絵展の感想
日本で開催される多くの展覧会は写真撮影NGですが、浮世絵展はフラッシュをたかなければ撮影がOKです。国芳や芳年の代表的な作品の壁パネルもたくさん設置されているので、ぜひ着物姿で記念撮影をしてみてください。
また江戸時代の後半期の浮世絵師である国芳や芳年の浮世絵は、現代に通じる風刺や広告的観点、審美、残虐性、世相を表していて非常に親近感を抱きました。江戸時代の人々が生きていた頃の息遣いが感じられてとっても楽しかったです。京都文化博物館×浮世絵×着物は最高のマッチングなので、ぜひお試しください。
第25回京都ミュージアムロードの開催
現在京都では、市民や観光客の方向けに京都の伝統や文化の多彩さ・奥深さなどを体感しながら 楽しんでもらうため、参加施設がその特徴を生かした様々な展示企画を実施している第25回京都ミュージアムロードが開催中です。期間:1/26-3/21
参加施設に設置のスタンプを3つ集めて応募すると,参加施設提供の素敵なミュージアムグッズや博物館ガイドブック等の全33種・165品が抽選で当たる「スタンプラリー」を実施しているので、文化博物館と一緒に他のミュージアム・博物館などを利用して申し込んでみてください。
京都着物レンタル夢館五条店
〒600-8103 京都市下京区塩竈町353 豊彩ビル
電話番号:075-354-8515
メール:info@yumeyakata.com
休業日:年末年始(12/31~1/3)
営業時間:10:00 ~ 17:30(最終入店16:00)